起業ものがたり

3月になると必ず思い出す出来事があるんです。

毎年3月になると、必ず思い出してしまう出来事があります。それは、私史上、最大級の試練でした。
今となっては、笑い話ですが、当時は辛すぎました。トホホ・・・

それは、海上自衛隊の江田島にある学校の教育用コンテンツを制作していたときのことでした。1年間の制作プロジェクトで、納品は年度末の3月。
10cmほどの厚さがある制御システムのフローに沿ったマニュアル約5冊分をシステムで制御できるように読み解き、新規にアルゴリズムを考え、それをパソコン上で実機と同様に操作できるようにするという開発を実装しました。

艦艇にある筐体のボタンの動きを実機と同じように操作できるようにするというオーダーは、当時の教育用コンテンツとしては新しいものでした。ボタンを押すとそれに反応して次の動きが実装されるコンテンツを作るときには、Adobeが提供していたFrashが使われていました。本プロジェクトでは、ゆうに1000を超える動きを実装していくため、Frashを使ったコンテンツではデータが重くなり、メモリが枯渇して教材がフリーズしてしまうことから、別の実装方法を検討しなくてはなりませんでした。そのころのコンテンツでは、メモリ不足で動かないというエラーは結構よく聞くものでした。

プロジェクトをスタートした当初、海自の担当者と呉港に停泊中の艦艇に乗り込み、実際の筐体を見せていただき、制作するコンテンツのイメージを膨らませていました。初めての艦艇だったので、全員興奮してわくわく感が止まりませんでした。乗船後は、みんなで呉港の近くにある地元で評判だというお店で海軍カレーを食べて、「やるぞ~!」と雄叫びをあげていました。モチベーションMAX!

まさか最後にとんでもない試練がやってくるとは、この時だれも想像していませんでした。

それから毎月1回、江田島に通うようになりました。私は、羽田から広島空港に行き、そこから呉行きのリムジンバスに乗り、呉駅についたら少し歩いて、フェリーに乗って江田島に渡り、江田島についたらバスに乗り学校前で下車、入り口で許可書をもらい、海の近くにある打ち合わせ場所まで歩いていきました。片道約6時間半かかるちょっとした小旅行を最初の頃は楽しんでいました。フェリーの前で写真なんぞをとってウキウキしていました。(笑)

長期にわたるプロジェクトにありがちですが、だんだん開発も終盤に入ってくると、だいぶ納品物の形が見えてくることもあり、想定していなかったことがくっきりと表れてくることがあります。ちょっとした工夫で乗り切れるものと、かなり手前まで戻って検討し直さないといけないことなどが表面化してきます。特にイレギュラー対応には頭を悩まされます。どこをどう対応するのか、どこまでを運用でカバーするのか等々、クライアントと相談しつつ、何とか完成までたどりつきました。はぁ~!

いよいよ3月に入り、「完成品をCDに入れて納品だ!」とエンジニアが意気揚々と江田島に乗り込みました。ここからが、私史上、最大級の試練の始まりです。エンジニアが学校のサーバーマシンに弊社システムをインストールして、次にコンテンツをアップロードします。その後、教室のPCでコンテンツがシナリオ通りに実装できていれば、完成検査に進めます。数日後にクライアントに完成検査をしていただき、プロジェクトは完了となります。のはずが・・・・

その当時、よくありがちな不具合パターンは、自社で動いていたシステムが納品先では動かないという現象。どっぷりそのパターンにハマりました。真っ青です!エンジニアからの電話で状況を把握し、ことの重大さを実感しました。すぐさま家に戻り出張の支度をして、いざ江田島へ馳せ参じる。私は、完成検査の時に合わせて出張を予定していましたが、まさかこのタイミングで江田島に向かうことになるとは・・・。自分の考えの甘さに震えました。

江田島に到着した日から自宅に戻れる日まで様々なことが起こりましたが、コンプライアンスの問題もあるため、私的な試練、トップ3を以下にご紹介いたします。今思い起こせば、笑えるのですが、当時はきつかった!

■第1位
長期出張となったため、次女の卒業式に出られませんでした。夫に頼みましたが、都合がつかないとのことだったので、長女に出席をお願いしました。その時は、母親としてなんとも情けない自分を責めました。今だったら笑って「ごめんね!」って言うだけです。

■第2位
呉港の近くにあるコンフォートホテルにエンジニアと20日間連泊しました。そのときのスケジュールは以下の通り。
朝7時過ぎのフェリーに乗船、海自の責任者と担当者に挨拶後、指定の作業場所でシステムの検証、お昼は敷地内にあるレストランで海軍カレー、また作業場所に戻って午後6時まで検証。夕方6時過ぎのフェリーで呉に戻り、ホテルでこれからやる作業の打ち合わせ、一旦部屋に戻り着替えてレストランに集合、お弁当係がコンビニ弁当を調達しみんなで食べた後、レストランのテーブルで作業、レストランが消灯となるころ部屋に戻ってまた作業。ワーカーズハイになっていたせいか、あまり眠くもなく夜中まで作業を行っていました。フェリーの前でパチリ!と写真を撮っていた幸せな頃はどこ行った・・・。

■第3位
やっと完成検査に臨むことができた日の朝礼で、「最後は気合です!」とみんなに号令をかけました。10時からの完成検査が始まるまで、いつもの作業場所に待機していた私たちは、みんな何となくそわそわしていました。「これでダメだったらどうなるんだろう」とマイナスな考えが頭をよぎるのでした。こりゃダメだ。私がこんなこと考えていたら、みんなも同じことを考えているはず、なんとかうまく行く空気に変えなければと思いました。仲間の一致団結力が爆発的な威力を持っていることをこの時ほど感じたことはありません。
この令和の時代、笑ってしまうようなエピソードですね。

無事、完成検査に合格してプロジェクトは完了しましたが、様々なことを学んだ1年でした。
一緒に頑張ってくれたスタッフには今でも感謝しています!

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